猫でも分かる日本薬局方試験

日本薬局方の試験方法について分かりやすく解説します。

1.化学的試験法 (6)酸素フラスコ燃焼法(ハロゲンフリー分析)

1.06 酸素フラスコ燃焼法(ハロゲンフリー分析)

燃焼時に有害ガスを発生するハロゲンや硫黄が入ってないかどうかを確認する方法。

酸素を満たしたフラスコ中で燃焼分解し, 発生したガスをフラスコ内の吸収液に溶解させ、その後イオンクロマトなどで分析を行うという流れ。
定量値のばらつきが少ないという特徴がある。


1. 装置
図1.06-1に示すものを用いる.

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[器具について](ジクロフェナミドなどでは製造中にできるセレンの限度試験の検液作成にも使われる。)
A:内容500 mLの無色,肉厚(約2 mm)の硬質ガラス製のフラスコで,口の上部を受け皿状にしたもの.ただし,フッ素の定量には石英製のものを用いる※1.
B:白金製のかご又は白金網筒※2(白金線を用いて栓Cの下端につるす.)
C:硬質ガラス製の共栓.ただし,フッ素の定量には石英製のものを用いる.

※1 フッ素を含む有機化合物を燃やすとフッ化水素ができ、これがガラスと反応していろいろなフッ化水素が出来てしまう。このうち、ケイ素、アルミニウム、カルシウムなどのフッ化物はフッ素の定量を妨害しない。だがホウ酸のフッ化物は水中でフッ素イオンを解離しないので定量が悪くなる。
上記の問題が起こるため、定量にはガラス製ではなく石英製のフラスコや共栓を使う。

※2 白金網は試料が網目から落ちないくらいのサイズ、40~60メッシュ大きさ1.5~2.5cm、線径0.15~0.2mmのものがよい。


2. 検液及び空試験液の調製法
医薬品各条に特に書いてない限り,次の方法で行う.

2.1. 試料のとり方
① 試料が固体の場合:
医薬品各条に規定する量の試料を図に示すろ紙※3の中央部に精密に量りとり,こぼれないように折れ線に沿って包み,白金製のかご又は白金網筒Bのに,点火部を外に出して入れる.
※3 ろ紙はハロゲン、硫黄の配分が少ないもの、成分は一定のものを用いる。

② 試料が液状の場合:
あらかじめ適当量の脱脂綿を,縦50mm,横5 mmのろ紙を用いて,その先端約20 mm (点火部)を残すように巻き込み,白金製のかご又は白金網筒Bの中に入れる.

適当なガラス管に試料を採取し,質量を精密に量り,一端を脱脂綿に接触させて医薬品各条で規定する量の試料をしみ込ませる.


2.2. 燃焼法
①2.1で作った吸収液をフラスコAに入れ,A内に酸素を充満させ,栓Cのすり合わせを水で潤した後,点火部に点火※4し,直ちにA中に入れ,完全に燃焼が終わるまで気密に保持する.
②検液の作成
A内の白煙が完全に消えるまで時々振り混ぜた後,15 ~ 30分間放置し検液とする.
また、別に試料を用いないで同様に操作し,空試験液を調製する.

※4 点火部の点火にマッチを使うと空試験が変動するので使ってはいけない。

 

3. 定量操作法
医薬品各条で特別に書いてない限り,次の方法を使う.
3.1. 塩素又は臭素
Aの上部に少量の水を入れ,注意してCをとり,検液をビーカーに移す.2-プロパノール15 mLでC,B及びAの内壁を洗い,洗液を検液に合わせる.
この液に、
ブロモフェノールブルー試液1滴
+希硝酸(黄色になるまで)
2-プロパノール25 mL※5
そして、滴定終点検出法〈2.50〉の電位差滴定法により0.005 mol/L硝酸銀液で滴定する.
空試験液につき同様に試験を行い,補正する.

※5 洗液にメタノールを用いるより、2―プロぱのーるを使った方が、終点での

   大きい電位飛躍が得られる。

最後に以下の値を用いて比で定量する。
0.005 mol/L硝酸銀液1 mL=0.1773 mg Cl
0.005 mol/L硝酸銀液1 mL=0.3995 mg Br

 

3.2. ヨウ素
Aの上部に少量の水を入れ,注意してCをとり,検液にヒドラジン一水和物※6 

2滴を加え,栓Cを施し,激しく振り混ぜて脱色する.
Aの内容物をビーカーに移し,2-プロパノール25mLでC,B及びAの内壁を洗い,洗液は先のビーカーに移す.
この液に、
ブロモフェノールブルー試液1滴
+希硝酸(黄色になるまで)
そして、滴定終点検出法〈2.50〉の電位差滴定法により0.005 mol/L硝酸銀液で滴定する.
空試験液につき同様に試験を行い,補正する.

最後に以下の値を用いて比で定量する。
0.005 mol/L硝酸銀液1 mL=0.6345 mg I

※6 強力な還元剤、I2→I2-にして脱色する

 

3.3. フッ素
Aの上部に少量の水を入れ,注意してCをとり,検液及び空試験液をそれぞれ50 mLのメスフラスコに移し,C,B及びAの内壁を水で洗い,洗液及び水を加えて50 mLとし,試験液及び補正液とする.
①フッ素約30 μgに対応する試験液(V mL)
②補正液V mL
③フッ素標準液5 mL
④水5mL×3(①~③それぞれの対照液)
それぞれ別の50 mLのメスフラスコに入れ,よく振り混ぜながら
アリザリンコンプレキソン試液※7/pH 4.3の酢酸・酢酸カリウム緩衝液/硝酸セリウム(Ⅲ)試液混液(1:1:1) 30 mL
+水を加えて50 mLとし,1時間放置する.
紫外可視吸光度測定法〈2.24〉により試験を行う.
①,②及び③から得たそれぞれの液の波長600 nmにおける吸光度AT,AC及びASを測定する.
注意)フッ素量45μg/50mLとすること。この濃度以下で検量線は直線になる。またpH4.3の酢酸塩緩衝液の添加量が多すぎると吸光度が低下する。また各試液の加える順番で吸光度が代わる。最も吸光度がいいのは混液だが、不安定なので用事調整が必要。このため、混液いれてから吸光度測定までの時間を一定にする必要がある。

検液中のフッ素(F)の量(mg)=標準液5 mL中のフッ素の量(mg) ×(AT - AC)/AS×50/V

フッ素標準液:フッ化ナトリウム(標準試薬)を白金るつぼにとり,500 ~ 550℃で1時間乾燥し,デシケーター(シリカゲル)で放冷し,その約66.3 mgを精密に量り,水を加えて溶かし,正確に500 mLとする.この液10 mLを正確にとり,水を加えて正確に100 mLとする.(標準液のフッ素量:0.006mg/mL)

※7 フッ素を定量出来る。これとフッ素が錯体を形成し、波長620nmで検出


3.4. 硫黄
Aの上部に少量の水を入れ,注意してCをとり,メタノール15 mLでC,B及びAの内壁を洗い込む.
この液に
メタノール40 mL
+0.005 mol/L過塩素酸バリウム液25 mL
10分間放置した後,
アルセナゾⅢ試液0.15 mLをメスピペットを用いて加え,
0.005 mol/L硫酸で滴定〈2.50〉する.空試験液につき同様に試験を行う.

終点はバリウムーアルセナゾⅢ錯体がアルセナゾⅢに変わる時の赤紫色→紅色である。

最後に以下の値を用いて比で定量する。
0.005 mol/L過塩素酸バリウム液1 mL=0.1604 mg S