猫でも分かる日本薬局方試験

日本薬局方の試験方法について分かりやすく解説します。

1.化学的試験法 (8)窒素定量法(セミミクロケルダール法)

窒素定量法(セミミクロケルダール法)

窒素定量法は,窒素を含む有機化合物を硫酸で加熱分解し,窒素をアンモニア性窒素とした後,アルカリにより遊離させ,水蒸気蒸留法により捕集したアンモニアを滴定法により定量する方法である.
要するに窒素をアンモニアにして測定する
※アゾやニトロを含むとNOX、N2でガスとなり、一部が消失→防ぐには還元など操作が増えてしまうのでこの方法は使えない。
ただ、それ以外の蛋白質アミノ酸などには可能で、正確性も高いので基本的にはこちらを用いる。

1. 装置
具体的な図は日本薬局方で確認されたし。
総硬質ガラス製で,アルカリ性アンモニア窒素を発生させるので、酸性が残っているとまずい。だから酸性物質を除去するために、装置に用いるゴムは全て水酸化ナトリウム試液中で10 ~ 30分間煮沸し,次に水中で30 ~ 60分間煮沸し,最後に水でよく洗ってから用いる.

〈器具一覧〉

A:ケルダールフラスコ
B:水蒸気発生器で,硫酸2 ~ 3滴を加えた水を入れ,突沸を避けるために沸騰石を入れる.
C:しぶき止め
D:給水用漏斗
E:蒸気管
F:アルカリ溶液注入用漏斗
G:ピンチコック付きゴム管
H:小孔(径は管の内径にほぼ等しい.)
J:冷却器(下端は斜めに切ってある.)
K:受器

※ただし,有機物の分解,生成したアンモニアの蒸留及びその定量における滴定終点検出法(電位差滴定法,比色滴定法等)など,自動化された装置を用いることもできる.


2. 装置適合性
自動化された装置(電位差滴定法,比色滴定法等)を用いる場合には,まず装置の適合性を定期的に確認する必要がある.要するにちゃんと測定できるかを確認する。
アミド硫酸(H3NO3S:97.094)(標準試薬)をデシケーター(減圧,シリカゲル)中で約48時間乾燥しその約1.7 gを精密に量り,水に溶かし,正確に200 mLとする.
この液2 mLを正確に量り,分解用フラスコに入れ,以下それぞれの装置の指示に従って操作し,アミド硫酸中の窒素含量(%)を求めるとき,14.2 ~ 14.6%(14/97.094×100=14.441)の範囲にある.


3. 試薬・試液
(1)分解促進剤
これは脱水炭化により試料を分解し、炭素を遊離させるために必要な試薬。この炭素が硫酸を還元し、SO2とCO2を生成する。

・作り方
硫酸カリウム10g硫酸銅(Ⅱ)五水和物1 g(+医薬品各条で書かれてるものがあれば)
を混合し,粉末にしたもの1 gを使う.
これ以外に同等以上の結果を与えることが検証されてれば種類、量を変更OK

・具体的な反応

含窒素有機化合物+H2SO4→CO2+H2O+NH4HSO4+SO2
これにアルカリを加えると、アンモニアを遊離する。
NH4HSO4+NaOH→NH3Na2SO4+2H2O

水蒸気と共に蒸留されるアンモニアを吸収液(ホウ酸液溶液)に吸収させる。
NH3+H3BO3→NH4・BO2+H2O(1)
2NH4・BO2+2H3BO3→(NH4)2B4O7+3H2O(2)
希薄溶液では(1)の反応が主。次に0.005mol/L硫酸で滴定する。
2NH3+H2SO4→(NH4)2SO4
従って対応量は
H2SO4=2NH3=(NH4)2SO4


4. 操作法
医薬品各条に書いてない限り,次の方法で行う.
①窒素(N) 2 ~ 3 mg正確に量り,ケルダールフラスコに入れ,分解促進剤を加える。
 フラスコの首に試料ついてたら少量の水で洗い込み,更にフラスコ内壁に沿って硫酸7 mLを加える.
②フラスコを振り動かしながら,過酸化水素※1) 1 mLを少量ずつ内壁に沿って加える.フラスコを徐々に加熱(フラスコの首部分で硫酸が液化するまで)する.
③液が青色澄明緑色澄明※2)となり,さらにフラスコの内壁に炭化物がなくなったら,加熱をやめる.もし上記変化起こらないなら、冷却した後,過酸化水素を少量追加し,再び加熱する.
④冷後,水20 mLを注意しながら加えて冷却する.そして、フラスコを,あらかじめ水蒸気を通じて洗った蒸留装置に連結する.受器には
ホウ酸溶液(1→25) 15mL、ブロモクレゾールグリーン・メチルレッド(※3)試液3滴、適量の水
を加え,冷却器の下端をこの液に浸す.
⑤漏斗から水酸化ナトリウム溶液(2→5) 30 mLを加え,注意して水10 mLで洗い込み,ピンチコック付きゴム管のピンチコックを閉じ,水蒸気を通じて留液80 ~ 100 mLを得るまで蒸留する.
⑥冷却器の下端を液面から離し,少量の水でその部分を洗い込み,0.005 mol/L硫酸で滴定する.
※ただし,滴定の終点は液の緑色微灰青色微灰赤紫色に変わるときとする.
 同様の方法で空試験を行い,補正する。

 0.005 mol/L硫酸1 mL=28.01(2N)×0.005×0.001gN=0.1401 mg N

※ただし,自動化された装置を用いる場合,その操作法はそれぞれの装置の指示に従って行う.

※1 過酸化水素加えるのは、分解時間短縮の為。ショ糖でもOK
※2 この色は還元が終了し、アンモニアが生成した証明
※3 メチルレッドよりも滴定終末点の変色(緑→微灰青色→微灰赤紫色:PH5)が分かりやすいから。