猫でも分かる日本薬局方試験

日本薬局方の試験方法について分かりやすく解説します。

1.化学的試験法 (1)アルコール数測定法 ①蒸留法

こいつは要するに大まかなアルコールの量を測定する試験。
チンキ剤(生薬をエタノールでしぼりだしたもの)などのエタノールを含む製剤に最低量含まれているか調べるために作られた。
上限値の規定のないものが多いが、これは金の問題上大過量のエタノールが含まれていることはありえない。
だって多すぎると酒税でえらい金がとられるし。

方法:
次の2つの方法で測定した15℃における試料10 mL当たりのエタノール層の量(mL)をいう.
温度、試料の量を合わせるのは、ずれると結果に影響が出るから。まあさすがにこんなことは言われなくても理系なら分かってるとは思うが…。

① 蒸留法
高校でもおなじみの沸点の違いを利用して分離する方法。
15℃で試料10 mLを量り,蒸留して得た15℃におけるエタノール層の量(mL)を測定し,アルコール数とする方法である.
熟練すれば誤差は1%以内。熟練すれば。大事なことなので2回言いました。たかだか1回10回の失敗で嘘つきというんじゃねえぞこのヤロー。ちなみにこの試験ではないがどこぞの公的機関の試験所が企業にちゃんと測れないのでどうすればいいか聞いてきたのは一部では有名な話。
ちなみにこのアルコール数に9.406かければ15℃の試料中のエタノールのvol%が分かる
エタノール量mL)×9.406=エタノールvol%

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1.1. 装置
存在感のある上の図1.01-1に示すものを用いる(第17改正日本薬局方を引用させていただいております。).総硬質ガラス製で接続部はすり合わせにしてもよい.要するに気体逃がさないよう密封されてればいい。
1.2. 試液
誰でも知ってるであろうアルカリ性フェノールフタレイン試液を用いる。なんでアルカリ性か?色を赤色にするためだよ。なんでこれを入れるのか?エタノールの量を分かりやすくするためだよ。
作り方:フェノールフタレイン1 gに水酸化ナトリウム試液7 mL(これでアルカリ性にする)及び水を加えて溶かし,全量を100 mLとする.
1.3. 操作法
試料10 mLを15±2℃で正確に量り,蒸留フラスコAに入れ,水5 mLを加え,沸騰石(小学生でも使う沸騰を抑えるもの。急に沸騰するとちゃんと余計なものまで気体になって分離できない)を入れ,注意してエタノール分を蒸留し,留液は共栓メスシリンダーDにとる.
蒸留は試料のエタノール含量によってほぼ表1.01-1に示す留液(mL)を得るまで行う(90以上または30以上は回収率が悪いと判断してね。恨むなら自分の腕を恨みなさい).

 表1.01-1(これも日本薬局方引用)

試料のエタノール含量(vol%)     留液(蒸留で取れた液ね)

80以上                   13

80~70                   12

70~60                   11

60~50                   10

50~40                   9

40~30                   8

30以下                   7

蒸留に際して著しく泡立つときは,リン酸若しくは硫酸を加えて強酸性とするか,又は少量のパラフィン,ミツロウ若しくはシリコーン樹脂を加えて蒸留する.
試料に次の物質を含む場合は,蒸留前に次の操作を行う.
(ⅰ) グリセリン:蒸留フラスコの残留物が少なくとも50%の水分を含むように適量の水を加える.これはグリセリン沸点は290℃で高すぎるから。共沸で沸点下げるためだよ。
(ⅱ) ヨウ素ヨウ素の色は黒なのでこのままではフェノールフタレインの赤色が見えない。だから、亜鉛粉末を加えて脱色する.(Zn+I2→ZnI2となりI2がなくなり脱色)
(ⅲ) 揮発性物質:かなりの量の精油クロロホルム,ジエチルエーテル又はカンフルなどを含む場合は,試料10 mLを正確に量り,分液漏斗に入れ,塩化ナトリウム飽和溶液10 mL(飽和食塩水で塩析するため。低分子有機化合物は高濃度の塩溶液に溶けないから。)を加えて混和し,石油ベンジン10 mLを加え,振り混ぜた後,下層の水層を分取し,石油ベンジン層は塩化ナトリウム飽和溶液5mLずつで2回振り混ぜ,全水層を合わせて蒸留を行う.ただし,この場合は,試料のエタノール含量に応じて留液を表の量より2 ~ 3 mL多くとる.
(ⅳ) その他の物質:遊離アンモニアを含む場合は,希硫酸を加えて弱酸性とし,揮発性酸を含む場合は,水酸化ナトリウム試液を加えて弱アルカリ性とする.また,石ケンと共に揮発性物質を含む場合は,(ⅲ)の操作において石油ベンジンを加える前に,過量の希硫酸を加えて石ケンを分解する.留液に炭酸カリウム4 ~ 6 g及びアルカリ性フェノールフタレイン試液1 ~ 2滴(上層のエタノールを赤に染め、水層との区別をしやすくするため。これにより、塩析が不十分であっても測定値を見分けやすくなる)を加え,強く振り混ぜる(炭酸カリウムが水分を吸収し、K2CO3・H2Oができる:塩析。).水層が白濁しない場合は,更に適量の炭酸カリウムを加えて(1~2gずつ。完全に溶けてから次を加える。)振り混ぜた後,15±2℃の水中に30分間放置し,浮上した赤色のエタノール層のmL数を読み取り,アルコール数とする.もし,両液層の接界面が明らかでない場合は,水を滴加し,強く振り混ぜ,前と同様にして観察する.